知っておきたい!そもそも光回線はNTTとKDDIだけだった!
光コラボの普及で「○○光」「△△ひかり」といったサービスがたくさん登場し、光回線がとっても増えたような状況です。でも、利用している光回線の種類は、全然増えていないことをご存じでしょうか。どういうことか、説明しましょう。
●光回線は速くて遠くまで届く
まず、高速インターネットは切っても切れない関係となった光回線の特徴について、おさらいしておきましょう。
光回線の最大のメリットは、もちろん、ものすごく速いことです。同軸ケーブルを使ったメタリック回線でも高速デジタル通信は可能ですが、メタリックケーブルに電気を流すと、ケーブルの抵抗によって熱を発生します。ケーブルに電気を通すだけで、電気エネルギーが熱に変わり、電圧が下がっちゃうんですね。これが馬鹿にならない。
デジタル通信の場合、電気のオンとオフ、あるいはプラスとマイナスで0と1を表します。閾値(いきち あるいはしきいち)といって、何ボルト以上ならオン、何ボルト未満ならオフと判定するという規格がありますが、この規格値以下に電圧が下がると、1かゼロか判別がつかなくなる。電磁波など、外部の雑音の影響も受けやすい。電圧が下がったり雑音で波形が乱れたりすると、何の情報なのか、わからなくなってしまうわけです。
身近なメタリックケーブルではUSBケーブルがありますが、ネットショップで見ると全部5m以下。USB2.0なら5m以下、USB3.0なら3m以下という制限があるため、10mなどの長いケーブルは存在しない。LANケーブルにも100mの制限があります。この距離を超えるには、間にスイッチングハブを挟んで信号を成形し直さないといけません。
通信回線の場合、USBなどと比べれば精度の高い通信を行っていますが、それでも数km~20kmごとに中継機を入れて、信号レベルが落ちないよう、増幅と信号の成形を行っています。
光ファイバーを使った通信は、こうした欠点が目立たない、非常に優れた伝送方法です。なにしろ、超高純度に生成された専用の石英ガラスを髪の毛ほどの太さに伸ばし、光の点滅で伝送するのできわめて高速の通信が可能です。理論的には光ファイバー1本で100Tbpsも十分に可能だと言われているほどです。
光も光ファイバーを通るうちに減衰、つまり弱くなりますが、電気抵抗よりもはるかに小さいため、中継距離を大幅に伸ばせる。利用する光ファイバーや伝送方式によっても違いますが、数十km~数百kmまで無中継で情報伝送することができます。
●光回線は雑音にも強く、通信傍受も難しい
おまけに、光回線は電磁波にも強く、外に情報が漏れにくい。電気を通さないガラスですから当たり前ですが、これは長距離高速通信にはもってこいの特徴です。
昔、ソ連がまだあったころ、潜水艦で海底ケーブルから通信を傍受している、などという話がまことしやかに伝えられたことがありました。メタリックの海底ケーブルや中継機からは電磁波が少しは漏れているはずですから、そこから類推して、誰かが笑い話として言い出したことかもしれませんが、光ファイバーは、そうした真偽不明の冗談を言えないくらい、情報セキュリティの面でも優れた通信インフラです。
●全国規模の光ネットワークはNTTとKDDIだけ?
いいことづくめのような光回線ですが、大きな難点があります。それは、光回線は新たに敷設しなくてはならないからです。
これは光回線に限りませんが、通信回線というのは、回線を敷設したり維持管理したりすることに、べらぼうなお金がかかります。特に有線回線は、半端ではない資金と時間が必要です。土地にはすべて所有者がいますから、そういう場所に電柱を立てたり地面に穴を掘ったりするには、地権者の了解をとったり、役所に申請を出したりと、並大抵ではない手間がかかります。高速光回線網を、全国で、安心して使える国は、世界にいくつもない。途上国や政情の不安定な国で、無線通信が先に発達しているのも、有線通信は敷設と維持管理が大変だからです。
1983年の電気通信事業法の改正、1985年のNTT誕生以来、新電電(NCC=New Common Carrier)と呼ばれる事業者がいくつか生まれました。自前の通信回線を持つ事業者です。JR系の日本テレコム、日本道路公団系の日本高速通信、京セラ系の第二電電(DDI)、東京電力系の東京通信ネットワークです。みな、資金力があり、電柱を立てたり地面にケーブルを埋めたりする土地のあるところです。
これらの会社はその後、吸収合併を繰り返してKDDIやソフトバンクなどに吸収されて消滅。今では光ファイバー網を全国規模で持ち、サービスを提供できるのは、最大手のNTT(東西)とKDDI(au)に集約されてしまいました。あとは、電力会社やCATV会社などが地域限定で提供する光回線があるくらいです。高速で話題になっているNURO光も、So-netがNTTの光回線を借り、フレッツ光の2倍の速度を出せる独自の通信規格でサービスを提供しています。
今、「○○光」「△△ひかり」など、光回線事業者がたくさん誕生したように見えていますが、ほとんどは自前の光回線を使っていません。その多くのサービスは、NTTとKDDIの光回線を使って独自の「サービス」を提供しているだけ。利用している光回線は、ほとんど一緒なのです。