今更聞けない…光回線はどうして速いって言われるの?
21世紀になって、家庭用光回線(FTTH)としてフレッツ光が登場しました。パソコン通信時代に使われていたモデムは言うに及ばず、電話回線を使ったデジタル通信であるISDN(64Kbps)やADSLと比べても、飛躍的に通信速度は上がりました。
当初は最速で100Mbps程度でしたが、今や1Gbps以上が標準。光回線は、どうしてこんなに速いのでしょうか。
■光が速いからではない
光回線は、髪の毛ほどの太さの石英ファイバーに、デジタル信号を光の形で送ることで、情報の伝達をします。
光は1秒間に30万km、地球の外周に換算して7.5周も回るほどのスピードがあります。この宇宙で、光より速いものは存在しません。これが光回線の速さの秘密だと思われるかもしれませんが、実は違います。
もう30数年前のことになりますが、NTTが電話局間などをつなぐ基幹回線に「F400M」(400Mbps)という方式の伝送路を実用化したと発表しました。
そのとき、NTTの技術研究所の人に「なぜ光だと速いんですか?」と質問したところ、こんな話をしてくれました。
「光で情報を送るから速いと勘違いする人もいますが、違うんです。
400Mbpsの伝送路は、メタリックケーブル(同軸ケーブル)でも実用化されているんです。
実は、光が光ファイバーを通る速度も、電気が電線を通る速度も、それほど変わりません。
難しいのは、電気信号の処理部分なんです。
ここを速くすれば、光ファイバーでもメタリックケーブルでも伝送速度は速くなります。
もっとも、光ファイバーのほうが、はるかに潜在能力が高いのは確かなんですけどね。
だから今回はスタート地点に立ったようなもの。これからもっと速くなりますよ」
その言葉通り、基幹回線の伝送速度は1.6Gbps、2.4Gbps、10Gbpsと上がり、現在では100Gbps以上の光伝送システムが導入されつつあります。
■光の点滅速度の向上がカギ
デジタル通信では、情報をゼロと1、つまり電気のオン/オフや光の点滅にして伝送路に流します。
この点滅速度が速ければ速いほど、1秒間に送れる情報の量が上がります。これは、光回線もメタリック回線も一緒です。
光通信は、この点滅速度(周波数)をべらぼうに速くできるのです。このため、一度に送れる情報の量が多い。しかも、光の周波数を変えたり、同じ波長の光の上に複数のデータを乗せたり、垂直に振動する光と水平に振動する光を同時に送ったりと、さまざまな方法で、複数の情報を同時に送る方法が考案されています。
高速道路の車線を増やすだけでなく、何階建てにも積み重ねて、通行する自動車の数を増やすようなものです。
メタリックケーブルでも似たようなことはできますが、信号同士が干渉したり、電磁波など外部からの阻害要因の影響を受けやすかったりと、限界が低い。おそらく、10Gbpsを超えたあたりで頭打ちになってしまうでしょう。
しかも、長距離になればなるほど、光ファイバーに対して不利になります。
反対に光ファイバーは、この限界が非常に高い。単位時間当たりの情報量の多い回線を複数まとめて流せますから、理論的には光ファイバー1本で100Tbpsも十分に可能と言われています。家庭用光回線の1Gbpsと比べると10万倍ですから、いかに光通信の可能性が大きいか、わかります。
ただ、光ファイバーのこちら側と向こう側では、電気信号が使われていることは、メタリックケーブルを使ったデジタル通信と変わりません。
つまり、電気信号を光の点滅に変換する部分や、それを元の電気信号に変換する部分の性能向上がカギとなるわけです。
■5Gを控え基幹回線の速度アップが急務に
現在、スマホや動画配信でトラフィックが逼迫してきつつあると言われますが、2020年の実用化を目指して、5G(第5世代移動通信システム)の研究が進められています。
5Gの速度は、最大で20Gbpsと言われています。家庭用の光回線よりも速いのです。こうなると、中継回線がボトルネックになるのは容易に想像がつきます。基幹回線の速度アップは避けて通れません。
現在、100Tbpsの実現を目標に、さまざまな研究機関で開発が進められているところです。
これらの成果は、将来的には家庭用の光回線にも生かされるはずです。いや、必ず成果を反映してほしいものです。光回線のスピードがスマホより遅くなってしまったら、あんまりありがたみがありませんからね。