光回線で人に迷惑かけることがあるって本当なの?
もう20年くらい前のことです。午後7時ころ、某雑誌の編集者から、校正ページのファイルを送ると電話がありました。待機しているとメーラーが受信を始めました。
しかし、何時間たっても終わりません。ようやく終わったのは、寝て起きて、食事をしたあと。12時間以上も受信していました。
当時使っていたのは、ISDN。64Kbpsのしょぼい回線です。そこに、編集者が印刷所のページデータをそのまま送ったものですから、こんなに時間がかかってしまったわけです。パソコンの性能も高くはありませんから、他の作業がとてもしにくい。とても迷惑したことを記憶しています。
■光回線を遅くする要因
高速の光回線が普及しましたし、プロバイダが容量制限をかけるようになりましたから、今ではメールで巨大なファイルを送受信することはなくなりました。したがって、こんなおバカなことはまず起きませんが、新たな要因で人に迷惑をかけることが、それほど珍しいことではなくなってきたようです。
そのひとつが、利用者の急速な増加。営業力の高い事業者が光回線の販売を始めたため、利用者がかなり増えました。
また、スマホや動画配信の普及、巨大なソフトのアップデートなどにより、日本のインターネット・トラフィックは、この3年で2倍に増えているそうです。
特にフレッツ光は、利用者が多いために、速度が遅くなったという声が増えてきたように感じられます。フレッツ光はたこ足配線のように接続されていますから、一度に使う人が増えると、どうしても速度は遅くなるんですね。
しかし、もっと大きな要因は、NTTの基幹回線とプロバイダーを接続する「網終端装置」というネットワーク機器です。
駅の改札のようなものと考えてください。近年のトラフィック急増で、ここが恒常的に輻輳(ふくそう)、つまり渋滞するようになってきたのです。
機器を増やせば改善するのですが、NTTの設置基準が1回線当たりの利用ユーザ数を基準(1Gbps当たり1万ユーザ)としているため、トラフィックの増大になかなか追いつかないというのです。
日本インターネットプロバイダー協会が今年(2018年4月)に、「ユーザ数によらずトラフィック増大に応じて増設してほしい」と要望を出しているほどです。
■クラウドバックアップに注意
利用者とトラフィックが増えて渋滞することは、私たち利用者がどうにもすることはできません。いわば、「みんなでお互いに迷惑をかけあっている」状態ですね。しかし、個人でも迷惑をかけることはあり得るのです。
それがクラウドサービス。普通にファイルの共有などでクラウドを使っている分にはかまいませんが、くせ者なのは「クラウドバックアップ」サービスです。
ネットワーク上にバックアップファイルを置けるサービスで、PCがクラッシュしたときも安心できる便利なサービスですが、問題はファイル容量でしょう。
べらぼうにファイルが大きいですよね。基幹回線とプロバイダーを接続する網終端装置の容量がギリギリのプロバイダーで、クラウドバックアップをするひとが増えれば・・・結果は明らかですよね。
実際、プロバイダーから「ファイルが大きすぎる」と連絡を受けることもあるようです。
これを防ぐには、別の方法でバックアップを取るか、混雑の起きにくい光回線、たとえばNURO光のように、フレッツ光とは基幹回線とプロバイダの接続方法が違い、混雑の起きにくい回線に乗り換えるしかないでしょう。
ただ、どんな回線を使うにせよ、特に必要もないのに巨大なファイルをアップロードすることは、なるべく避けたほうがいいことは、言うまでもありません。
お互いに気分良く使うためにも。