そもそも…光回線とブロードバンドって違うものなの?!
この連載の「光回線ってそもそも何?」に登場したAさんから、またまた質問がありました。
「光回線とブロードバンドって、何が違うの?」
光回線を選ぼうとカタログやWEBを見ているうちに、光回線とブロードバンドの違いがわからなくなったそうです。「言葉が違うから、違うんだろうけど、何が違いかわからない」とAさん。なるほど。自分がわからないことが「わからない」と認識できただけでも、大きな前進です。
光回線とブロードバンドの違いなど、知らなくてもかまわない知識ではありますが、知っていれば、いろいろなサービスを比較するとき、判断の手助けになります。Aさんを相手に簡単に説明したので、そのやりとりを公開します。
■ブロードバンド=高速通信ではない?
N:最初の「光回線ってそもそも何?」でも説明したように、ブロードバンド=高速通信、光回線は速い、と理解しておけばいいと思うんだけど、ダメ?
A:それはそうなんですが、WEBを見ていると「光=ブロードバンド」って、どうしても思えてきちゃうんですよね。「ブロード=幅広い」「ブロードバンド=広帯域」って説明されても、じゃ、光とブロードバンドは同じものなの? それとも違うものなの? とわからなくなっちゃうし。
N:ほう、よくそんなことまで疑問に思ったね。光とブロードバンドの違いなんて考える人は、あんまりいないんじゃないかな。何にせよ、疑問を持つことはいいことだと思う。
A:なんか、微妙に馬鹿にされているような・・・
N:そんなことはない。じゃ、軽く説明しようか。といっても、技術屋さんではないのでごく一般的なことしか言えないんだが・・・実は「ブロードバンド=広帯域」という言葉には、「高速通信」という意味は元々なかったのよ。
■技術用語の意味が広がった
A:えっ! そんなの初耳。じゃ、なんでそんなことになったの?
N:「bandwidth=電波の帯域幅」という意味の技術用語を、「通信速度」に援用したのが最大の理由でしょう。もともと無かった意味が加わって、帯域幅だけではなく、言葉の概念までブロード=広くなってしまった。最初に通信でブロードバンドを使い始めた人たちが、「高速通信」と漢字で書くより、「ブロードバンド」のほうがカッコいいと思ったのかもしれないけど。
A:では間違った言葉を使ったわけ?
N:そうとも言えない。たとえば、ラジオを聞くとき、聴きたい曲の周波数を合わせるでしょ? 表示されている周波数はひとつだけれど、実際はその前後、数KHzとか数MHzの周波数を使っている。それを、「bandwidth=帯域幅」と言います。これが広いほど、多くの情報を送れる。
駅の改札を増やせば単位時間当たりに通れる人が増える、道路の車線を増やせば通行量が増える。それと同じように、帯域幅を広げると、電波に載せられる情報が増える。デジタル通信では、単位時間当たりの情報量=通信速度だから、帯域を通信速度の意味でとらえ、「ブロードバンド=高速通信」と言っても、間違いはないんです。
■高速鉄道と新幹線によく似ています
A:なるほど。じゃ、光回線は高速通信だから、光回線はブロードバンドと同じと考えていいわけですね。実は、電波の話はよくわからなかったけれど。
N:電波の話はどうでもいいです。ただ、光回線はブロードバンドとイコールじゃないということをよく覚えておいて。
A:どういうこと?
N:速度がからむから、鉄道をイメージしてみようか。高速鉄道は新幹線だけじゃなく、フランスのTGVやドイツのICEなど、いくつもあるでしょ?
「ブロードバンド」は「高速鉄道」と同じ概念で、その下に、光回線やADSL、CATVという、具体的な通信回線があるわけです。光回線はブロードバンドの一つではあるけれど、光回線だけがブロードバンドではないのです。もちろん、スマホだってWi-Fiだって、速度が速ければみんなブロードバンドの一つになるんです。
A:ああ、そういうことね。少しすっきりした。でも、「高速かそうではないかって、どう決めているんですか? 実は、通信回線をいろいろと比較しているんですが、スマホだけでもいいような気もするし、ADSLのほうが安いからこれでもいいかなあと思ったり、迷っているんです。
N:ブロードバンドかナローバンドかというのは、相対的なものだから、線引きは難しいかもしれない。一昔前は通信速度が「Mbps」(メガビット/毎秒)オーダーの回線はブロードバンドと呼んでいたようだけれど、最近は無線通信でも数百Mbpsが当たり前のようになっているからねえ。
光回線だとさらに速くなり、1Gbpsは当たり前、「NURO光」のように、「下り最大2Gbps」をうたうものまで登場している。さまざまなサービスを比較すると、ブロードバンドと呼べるのは、数十Mbps以上の回線と考えてもいい時代になったんじゃないかという気がします。
■デジタル通信は速度だけでなく変化も速い
A:そうか、やっぱり光回線は圧倒的に速いのね。光回線の中から選ぼうかな?
N:速いのは確かだし、雑音にも圧倒的に強いから、速度を必要としているなら光一択になるけれど、コストパフォーマンスは、使い方によって変わるからね。PCやスマホを含めて、自分のネットの使い方をよく把握して、それから選ぶといいと思う。
A:それがなかなか難しい。けど、やらなくちゃいけませんね。
N:それに、デジタル通信の世界は変化が速い。今の1000倍、100万倍の通信速度を持つサービスがいつ現れても不思議ではない。現に、無線通信の世界では、次世代の通信規格である5G(第5世代移動通信システム)の研究開発が進められ、2020年にはスマホで10Gbpsの通信速度が実現すると言われている。
A:えっ、5G? それってなんですか?
N:5Gについては、いずれ解説しようと思うから、それまで待って。いずれにせよ、技術的な変化が激しいので、明日はどうなるかわからない面がある。乗り換えが面倒なことも多いから、情報を集めておくといいね。
A:はい、わかりました。